Ⅳ-⑩ 脊柱及び体幹骨の障害
- 1脊柱及び体幹骨の障害の認定基準
- (1)脊柱及び体幹骨の障害とは
- ア 脊柱とは
- イ 後遺障害等級認定における脊柱
- ウ 体幹骨とは
- 2 後遺障害等級
- (1)変形障害
- ア 変形障害の等級認定
- (2)運動障害
- ア 運動障害の等級認定
- (3)荷重機能障害
- ア 荷重機能障害の等級認定
- (4)体幹骨の障害
- ア 体幹骨の等級認定
- (1)変形障害
1 脊柱及び体幹骨の障害の認定基準
(1)脊柱及び体幹骨の障害とは
ア 脊柱とは
脊柱とは、いわゆる背骨と呼ばれる部分を指します。
脊柱は、椎骨(ツイコツ)と呼ばれる骨が連続するような形で構成され、上から、①頚椎(7椎)、②胸椎(12椎)、③腰椎(5椎)、④仙椎(5椎)、⑤尾椎と呼ばれます。
診断書で用いられる「C1」や「T3」などといったものは、脊柱のどこの部分が病傷したかを表示したもので、各々上から、
①頸椎(Cervical spine)はC1からC7、
②胸椎(Thoracic)はT1からT12、
③腰椎(Lumbar)はL1からL5、
④仙骨(Sacrum)はS1からS5、
と表記されます。ですので「C2に破裂骨折を認める」とある場合は、「頚椎の上から2番目の推骨が破裂骨折している」ということになります。
また、「L3/4について後方固定術を実施」などといった記載は、「L3とL4の間で後方固定術を実施した」と読み替えることができます。
イ 後遺障害等級認定における脊柱
後遺障害等級の認定にあたり、仙骨及び尾骨は、脊柱に「含まれません」。
脊柱の後遺障害は、「頸部や体幹を支え、また、支えたまま保つ役割」や「しなりによるショック吸収、体幹運動」に着目しているので、これらの働きに殆ど関与していない、仙骨・尾骨は、脊柱としてみられないのです。
また、頸椎(①)と頸椎より下部の骨(②胸椎③腰椎)では、原則として異なる部位として取り扱われ、それぞれの部位につき等級認定がなされます。
ウ 体幹骨とは
後遺障害等級の認定での体幹骨とは、①鎖骨②胸骨③肋骨④骨盤骨のことを示します。
2 後遺障害等級
脊柱及び体幹骨の障害は、「変形障害」「運動障害」「荷重機能障害」に分類されます。
(1)変形障害
脊柱の変形障害は、下記のように判断されます。
【大前提】
①エックス線・CT画像・MRIなどの検査で、骨折や脱臼が確認できること。
若しくは、固定術が施されていること。
※圧迫骨折においては椎体の1/4が圧壊していること
+
【等級に差異が生じる判断】
①被害を受けた椎体の個数
②被害を受けた椎体の高さの減少の程度
③後彎の発生
④側彎の角度数
③後彎の発生の、「後彎(コウワン)」とは、圧迫骨折や破裂骨折により、椎体の前方(お腹側)の高さが縮むことで、椎体が身体を支えきれず、前かがみや極度の猫背の様な状態になってしまうことをいいます。後彎は、椎体の前方(お腹側)の高さと、後方の(背中側)の高さを比較し判定します。
また、④側彎の角度数の、「側彎(ソクワン)」とは、脊柱が横方向(左右に)に、脊椎が曲がり、また、ねじれてしまっている状態のことをいいます。側彎はコブ法とよばれる方法で測定されます。
コブ法は、脊柱の曲がり始めの椎体から曲り終わりの椎体まで、つまり脊柱の中でカーブしている範囲を設定して、その中で、上部で一番傾斜している椎体と、下部で一番傾斜している椎体の、交差する角度を測定します。
脊柱の後遺障害では、原則として、頸椎と頸椎より下部の骨(胸椎・腰椎)は分けて考えると述べましたが、後彎・側彎については「例外的に、頸椎と下部の骨(胸椎・腰椎)は一連として」考えます。つまり、後彎では、傷害を受けた全ての椎体について、側彎では、脊柱全体について測定するのです。
変性側弯症
圧迫骨折
ア 変形障害の等級認定
コブ法
(2)運動障害
脊柱の運動障害認定に当たり、頸部・胸腰部は2パーツと分けて考えられ、両方に硬直が認められているのか、片方のみに可動域制限が出ているのかにより等級認定が異なります。
また、下記①~③いずれかの要件を満たし、「疼痛が原因で」運動障害が発生しているものは、脊柱の運動障害には該当せず、局部の神経症状として等級が認定されます。
①エックス線・CT画像・MRIなどの検査で、圧迫骨折や脱臼が確認できない
②項背腰部軟部組織の器質的変化が認められない
③脊椎固定術が行われていない
ア 運動障害の等級認定
(3)荷重機能障害
脊柱に損傷がある場合、頸部・胸腰部の保持が困難であるとして、補装具を装着しなければならない場合があります。
ア 荷重機能障害の等級認定
(4)体幹骨の障害
体幹骨は前述致しました通り、①鎖骨②胸骨③肋骨④骨盤骨のことを示します。
体幹骨の障害は、その箇所の担う役割がそれぞれ異なるので、裁判上、労働能力損失の器官や、損失率、さらには損失の有無までも争いになる場合があります。
ア 体幹骨の等級認定