Ⅳ-⑦ 鼻の障害
1 鼻の後遺障害とはどの様なものか
(1)鼻の障害についての説明
(2)欠損障害について
ア 認定基準
イ 9級5号、認定基準の解説
ウ 9級5号の基準に達しないもの-外貌の醜状として認定されないか
(3)機能障害について
ア 認定基準
イ 検査方法
2 鼻の後遺障害について争いになりやすい点、裁判例
1 鼻の後遺障害とはどの様なものか
(1)鼻の障害についての説明
鼻の障害としては、9級5号として鼻の欠損障害が定められています。
鼻の欠損を伴わない機能の障害についても、その障害の程度によって相当な等級が認定されます。
自賠法施行令別表第2備考6に「各等級の後遺障害に該当しない後遺障害であって、各等級の後遺障害に相当するものは、当該等級の後遺障害とする」と定められているからです。
(2)欠損障害について
ア 認定基準
イ 9級5号、認定基準の解説
鼻の欠損障害として9級5号の認定を受けるには、次の2つの要件を充足する必要があります。
②機能に著しい障害を残すもの:鼻呼吸困難または嗅覚脱失
①鼻の欠損について
鼻は、大きく区分すると、外鼻と鼻腔とに分けられます。外鼻は、顔の中央部の三角錐の部分で、その上半分は鼻骨で、下半分は軟骨で形成されています。鼻の欠損障害は、外鼻の軟骨部の全部又は大部分を欠損したものが対象となるのです。
②機能に著しい障害を残すもの
ⅰ鼻呼吸が困難となっているもの 又は
ⅱ嗅覚脱失をいい、
T&Tオルファクトメーターで検査がなされます。詳細は後述します。
ウ 9級5号の基準に達しないもの-外貌の醜状として認定されないか
鼻の欠損障害として9級5号の認定を受けるには、次の2つの要件を充足する必要があります。
ⅰ 鼻の一部欠損
鼻の一部欠損(欠損が全部又は大部分の欠損に達しないもの)は、醜状障害としての評価対象となります。
すなわち、鼻の一部欠損が顔面部に、人目につきやすい「10円銅貨大以上の組織陥没」相当と言えれば外貌の醜状として7級12号が認定されうるのです。
ⅱ 鼻の欠損障害を伴わない機能障害
自賠法施行令別表第2備考6により、障害の程度に応じて、他の障害に準じて12級相当、14級相当と評価される。以下(3)にて詳述。
(3)機能障害について
ア 認定基準
イ 検査方法
嗅覚の脱失・減退については、T&Tオルファクトメーターによる基準嗅力検査の認知域値の平均嗅力損失値により判断されます。
嗅覚の脱失・減退を自覚されている事案では、通院されている医療機関にT&Tオルファクトメーター検査設備があるかどうか確認しておくべきです。
判定区分は次のとおりです。
なお、嗅覚脱失については、アリナミン静脈注射(アリナミンFを除く)による静脈性嗅覚検査による検査所見のみによって確認しても差し支えないとされています。
2 鼻の後遺障害につき争いとなりやすい点、裁判例
鼻の後遺障害に関する裁判例では、労働能力に直接影響を与えるものではないとして、労働能力喪失の有無や喪失率の制限が保険会社より主張され、被害者との間で争いとなることがあります。鼻の後遺障害に伴う労働能力損失の有無及び程度の判定は、
などの事項を、総合考慮して判断されるとされています。
従って、鼻の後遺障害(嗅覚脱失)による労働能力損失の判断では、被害者の職業との関連性が重要となるのです。被害者の立場からすれば、事故前に携わっていた職業について具体的に説明し、残存する後遺障害がどの様に仕事に支障となっているのかを説明していく必要があります。