重要なポイントは2つ
残存する痛みを「後遺障害」として「等級認定」してもらうこと
ポイント2損害賠償の計算方法には、保険会社の基準によるものと裁判所の基準によるものと2つあることを理解して、裁判所の基準で計算した場合の損害賠償額を把握しておくこと
→損害賠償金の内訳については詳細ページをご参照ください。
1、何をすべきか
(1-1)事故に遭った直後
①人身事故としての届出~実況見分の実施~出来れば実況見分への立会い~
ケガをしている場合、警察・保険会社に「人身事故」として扱ってもらうことが重要です。物損事故として扱われていると実況見分が実施されず、後日、過失割合で紛争が生じた時に重要な証拠が1つ減ってしまうことがあります。
②医療機関への通院継続
病院へ1か月以上の空白を作らずに通院することが大事です。1か月以上の空白期間があると、その時点で「治癒した」と扱われてしまう場合があります。そうなると治療費打ち切りという話になってしいますし、後日、後遺障害等級認定をする時に不利に働きかねません。
③医師とは喧嘩をしない
症状によっては、接骨院・整骨院での治療に効果を感じる場合もあると思います。しかし、後遺障害等級認定を狙うこの場面では、病院への通院期間には間断を残さないようにしておいた方が良いと考えています。
●お医者さんに後遺障害の見込みについて慎重に判断してもらいましょう。後遺障害発生の見込みについて「ない」と安易に書かれてしまうと、後日、後遺障害が残ったときに「覆すのが大変」になります。
④物的な証拠の保管
後々、後遺障害の有無・程度を争うことになる場合、「事故態様がどの様なものだったか」が重要な要素となってきます。例えば、物損の資料の他にも、破れた洋服、衝突時に着用していたヘルメットなどの物的な証拠は、身体のどの位置に衝撃が加わったのか、衝突の程度を推測するうえで重要な証拠となってきます。物的な証拠は、事故を思い出してしまいそうだから・・等と捨ててしまわず、賠償について決着が付くまでは保管しておくべきだと思います。
(1-2)症状固定日まで
①早いうちに、MRI画像を撮影しておく出来れば解像度の高い検査装置で撮影する。
ア 軟骨組織等の損傷等が疑われる事案に注意
骨折はしてなさそうだけれど、明らかに膝の半月板や肩の腱板など軟骨組織や腱や靱帯などの損傷等が疑われる事案では、早いうちにMRI画像等を撮影しておく必要があります。それも、出来るならば解像度の高い検査装置で撮影した方が良いでしょう。
骨折等が疑われる箇所については、病院で画像の撮影をするのが通常です。他方、靱帯の部分断裂、半月板の損傷では画像撮影は実施されないことが多いのですが、後々、後遺障害の残存の有無について保険会社側と紛争になりかねません。
イ 撮影時期が遅いと因果関係が争われてしまう
※事故後4か月以上経過してから撮影した画像で認められた軟骨組織の損傷について後遺障害の残存が争われた事例において、「事故から4か月以上経過してから撮影されたものであり、診療録において認められる症状経過等も併せ検討すれば、本件事故受傷によって生じたものと捉えることは困難です。」などと自賠責損害調査事務所に認定された例を見たことがあります。
受傷結果と事故との因果関係を争われないようにするためにも画像の撮影は早いほうが良いと思います。
②後遺障害等級を狙う事案では特に注意
痛みを裏付ける「他覚所見の有無」が分かれ目となる後遺障害14級か12級かが争われそうな事例では、費用や身体の状態との相談にはなりますが、出来れば、3.0テスラ以上の高性能検査装置でMRIなど高性能な検査装置で画像をとっておいた方が良いと思います。
※高性能MRI検査装置で画像を撮影することが有効な事案なのか否かについてもアドバイスさせて頂きます。
見込みがない事案で高性能MRI検査装置のある検査機関へ行ってもムダだと思います。
。
③鍼灸治療などは「医師の指示」を証拠として残しておく
鍼灸治療やプール歩行といったリハビリを受ける場合、医師の指示があったことを証拠として残しておくべきです。裁判例では、鍼灸治療費などは「医師による指示があり、治療のため相当であったこと」を条件としていますので、後々、保険会社から争われないように医師の協力を仰いでおくべきです。
(1-3)なるべく早めに相談できる専門家を捜しておく。
事故は1つ1つ個性・特徴を持っています。後々、保険会社と争いになるポイントはどこなのかを早い段階から予想をたてておければ、お医者さんとのつきあい方や証拠の残し方など、上手な行動をとることが出来ます。 交通事故にあってしまった過去は動かせませんが、保険会社とのつきあいの終点がみえていれば、将来どうしたいのかお気持ちを整理して適切に行動できると思います。
2、症状固定日に至ったら、被害者請求で後遺障害の等級認定申請手続きを進める。
ア 症状固定時期の判断については、争いになりがちです
「症状固定」とは、これ以上治療を続けても、症状の劇的な回復、改善が見込めず、大きな増悪もないと判断される状態(これ以上、良くも悪くもならない状態)で、その判断は(保険会社ではなく)医師がします。
※保険会社は、打撲と診断されている事故ですと3か月程度で、捻挫と診断されている事故ですと6か月程度で『そろそろ症状固定ですので後遺障害診断書を送付します。主治医の先生に後遺障害診断書を書いて貰って来て下さい。』などと言ってきます。
症状固定に至ると、治療費は打ち切られ、休業損害の支払いもストップされてしまいます。
イ 症状固定に至ったら後遺障害等級認定の申請へ
症状固定との診断を受けた後にも痛みや機能の障害が残存する場合、残存する症状について「後遺障害が残存したこと」「後遺障害の程度(等級)」を認定してもらうべきです。
被害者請求という申請方法によって、後遺障害の認定を受けることが出来ると、自賠責保険金という最低限度の生活補償の役割を持った一時金の支払いを受けることが出来ます。
また、損害賠償金を受けるにあたって、後遺障害の認定を受けていると、「後遺障害慰謝料」という名目と「逸失利益」という名目で賠償金を受けることが出来ます。
後遺障害慰謝料や逸失利益といった賠償の対象となる費目については、詳細な解説ページをご参照ください。
(2-1:事前認定):手続きは簡単だけれど難点があります。
ア 損害保険会社が主導する申請方法
保険会社担当者は、そろそろ症状固定という時期を見計らって『後遺障害診断書の書式を送付しますので主治医に記載してもらったうえ、保険会社に送り返して下さい。』といったことを言ってくると思います。
そのうえ、『後遺障害の申請手続きはうちでやっておきます。』とも述べてくるでしょう。
保険会社に後遺障害の申請手続きを委ね、保険会社が損保料率機構に後遺障害等級認定を依頼し、認定がなされることを「事前認定」と言います。加害者側の保険会社が被害者に示談金を提示するにあたり、事前に後遺障害の等級認定を依頼するため事前認定というのです。
被害者にとってみれば、事前認定は、ご自身では主治医に後遺障害診断書を書いてもらい保険会社に送るだけで手続きが進んでいくのを保険会社任せに出来るので、簡単で楽な認定方法と言えます。
イ 大きな難点、デメリット
しかし、この申請の仕方(事前認定)ですと、後遺障害等級が認定されても自賠責保険金を相手の任意保険会社に握られたまま示談交渉をすることとなるので、生活費に困っている、とか治療費を打ち切られた後にも治療をしている場合など、目先のお金が必要なために解決を急いでしまうあまり低い金額で示談に追い込まれてしまうことが多いです。
後遺障害等級認定の申請を保険会社任せにすることは、お勧めしません。
(2-2被害者請求):手間がかかりますが、メリットが大きいです。
ア どの様な申請方法か
被害者請求という方法は、被害者側で損害調査事務所に後遺障害の等級認定を申し立てる方法です。
交通事故証明書、診断書、診療報酬明細書、後遺障害診断書などの定型書類数種類を揃えて、加害者が入っていた自賠責保険会社に書類を送ることで認定を申請します。
手慣れた事務所に依頼すれば、素早く、本人の手間はあまりかからず被害者請求の形で等級認定の申請が出来ます。
イ メリット
被害者請求の最大のメリットは、この方法で等級認定を受けると、等級が認定された直後に、自賠責保険金としてそれなりにまとまったお金が被害者本人のところに支払われることです。
後遺障害14級ならば75万円、12級ならば224万円の入金がなされますから、目先の生活費欲しさに不当に低い金額での示談を回避することが出来ます。
じっくり腰を据えて損害賠償の交渉を続けましょう。
A.被害者請求 ①損害保険料率算出機構⇒②自賠責保険会社 ⇒ ③被害者
B.事前認定 ①損害保険料率算出機構⇒②任意保険会社⇒ ⑤被害者
3、後遺障害等級が認定された後
(3-1):認定された等級に異議を申し立てれば変更の可能性があるか否かを検討。
等級が1つ繰り上がるだけで賠償金は数百万円単位で変わってきます。等級に異議を申し立てれば変更になる可能性があるならば異議申立という手続きをしましょう。
※等級認定異議申立は、認定基準のポイントがわかっている専門家に依頼した方が時間の浪費がなくて済むと思います。
※認定基準のポイントについては等級認定の解説ページをご参照ください。
(3-2):裁判所基準による解決へ交渉、訴訟提起
多くの交通事故被害者向けサイトに解説されている通り、保険会社独自の基準で計算した損害賠償額で示談してしまうのではなく、裁判所の基準による損害賠償額を計算しておきましょう。そのうえで裁判所基準による賠償額での和解を目指して示談交渉、訴訟提起を検討していきましょう。
※裁判所基準による賠償額の計算や示談交渉・訴訟の提起の依頼は、専門家に支払う費用と期待できる結果とを天秤にかけて、手元に残るお金が多くなるかどうかで決めるべきでしょう。