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財産を守る制度の設計~成年後見制度の利用

(1)制度の概要、利点

成年後見制度は、判断能力の不十分な方々が、自分にとって極めて不利益な契約であってもよく判断できずに契約を結んでしまい、悪徳商法の被害等にあってしまうこと等から保護し、支援していくための制度です。

例えば、高次脳機能障害の患者本人が、500万円の事業への共同出資契約なる契約を結ばされてしまった場合で、よくよく契約の内容を検討すると事業の実態は乏しく、お金を騙し取られている契約であったとします。

ご家族としては、
「家族の同意がないから契約として効力を生じさせない。」とか
「契約をあとから取り消したい。」とか
「そもそも患者本人は契約が出来ないようにしたい。」など
といった気持ちになることも有り得ると思います。

成年後見制度は、例えば、判断能力に問題を抱えた方が、思いがけずに不利益を被ることを防ぐための制度を、本人や配偶者、四親等内の親族などが家庭裁判所に申立をすることで設計しておくという制度なのです。

高次脳機能障害に陥っているけれど、足腰は元気で気力もある場合、あちこち出歩いたりして社会との接触は普通にあって、賠償金などの財産を狙われることもあるため、成年後見制度を利用するメリットはあるのかもしれません。

成年後見制度には、大きく法定後見制度と任意後見制度の2つがあり、
法定後見制度には、判断能力の程度など本人の事情に応じて、「後見」「保佐」「補助」と3つに制度が分かれています。

(2)法定後見制度の概要

ア 後見(成年被後見人)

「判断能力が欠けているのが通常の状態の方」を対象として、
「日常生活に関する行為以外の行為」(ちょっとした買い物以外の契約等)を
「取り消すことが出来る」(民法9条)制度

イ 保佐(被保佐人)

「判断能力が著しく不十分な方」を対象として、
「借財、保証人になること、訴訟、贈与など、相続の承認・放棄、居住している建物の改築、増築、大修繕や新築など」の行為を
「保佐人が同意」しない限り、有効にはならない(民法13条)とする制度

ウ 補助

「判断能力が不十分な方」を対象として、
「借財、保証人になること、訴訟、贈与など、相続の承認・放棄、居住している建物の改築、増築、大修繕や新築など」の行為のうち、申立があった特定の行為を
「補助人が同意」しない限り、有効とならない(民法15条~)とする制度

(3)私の体験記

と書いてきたものの、成年後見制度を利用すると、本人の財産管理処分権限に制限がかかってしまい、面倒な事も多かったりします。

成年後見制度が出来たばかりの2000年頃、私は、私の祖母(認知症になって方々にお小遣いを配って歩いていた様な状態だった)を被保佐人とし、私の母親(祖母にとっては娘)を保佐人として選任するよう申し立てたことがあります。

使ってみての感想は、確かに足腰は元気で、一見するとなんでもできるようにみえた祖母が、床下に謎の石をしきつめる怪しげな業者に言われるがまま「ハイ、ハイ」と言って契約したうえ、お金を払ったりしようとするのは止めることが出来るようになりました。

しかし、介護施設に入ることになった後、成年被後見人名義の不動産を売却して現金にしようとしても簡単には裁判所は売却を許可してくれません。
家庭裁判所への毎年の財産状況の報告も結構めんどくさいです。

成年後見制度の利用は、資産の多寡、本人の年齢、判断能力の状況に応じて個別に判断していくべきだと思います。

(4)家庭裁判所から成年後見人を選任してもらう場合

後見が必要な方が高額な財産をお持ちの場合や、財産を巡って紛争が起こりそうな事案では、家庭裁判所から、利害関係のない弁護士を成年後見人や成年後見人の監督人が選任されることがあります。

成年後見人は、財産管理をしていく過程で自らの報酬も裁判所に報告し中立な立場で後見業務を担っていかなければなりません。

民事裁判では、成年後見の申立費用や成年後見人の報酬なども「必要かつ相当」と認められれば、損害賠償の対象として認められることがあります。

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