高次脳機能障害の後遺障害等級認定
1、高次脳機能障害~後遺障害等級認定の運用~
(1)STEP1~経験的に感じる、実質的なはじめの振り分け-画像所見の有無、意識障害の有無
ア 損保料率機構自賠責損害調査事務所の運用
高次脳機能障害の後遺障害等級認定では、まず、
ⅰ MRI、CT画像所見の有無 (画像をCD―Rにコピー)
ⅱ 事故直後の意識障害の有無(「頭部外傷後の意識障害についての所見」という定型の書式があります)
によって、結論は大きく以下の通りに分類されます。
①→器質性の障害(画像所見有り、或いは事故直後の意識障害有り) 1級~9級
②→非器質性の障害(画像所見はない、意識障害もなし。異常は生じている)12級か14級
保険金の支払いが伴う以上、MRI,CTという科学性がはっきりした検査方法によって判断されるか否かが分水嶺となっています。
イ 高次脳機能障害に認定されうる後遺障害等級
高次脳機能障害の発症が自賠責保険における後遺障害と認定されると、後遺障害等級としては、「神経系統の機能又は精神に障害を残すもの」として、1級1号、2級1号、3級3号、5級2号、7級4号、9級10号の各等級に分類されます。
(2)STEP2~等級認定へ~
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- 等級認定に必要な書類
大きく分類すると事故に関する資料として「交通事故証明書」「事故状況報告書面」や、毎月病院で発行される書面「診断書」「診療報酬明細書」や、定型の「後遺障害診断書」に、前述の「頭部外傷後の意識障害についての所見」という書面と
①「神経系統の障害に関する医学的所見」
②「日常生活状況報告」
が必要となってきます。
定型の書式に、患者の家族が〇付けするなどして作成する書面です。受傷前と受傷後の日常生活の状況の変化、53項目の日常生活状況について5段階評価していきます。後述する4能力の喪失の程度を意識して、各種神経心理学検査や医師の医学意見と齟齬がないように記載する。異議申し立てに際しては、日常生活状況をビデオ撮影して添付するなどの工夫をするのも手です。
- 自賠法施行令上の認定基準~抽象的でわかりにくい~
高次脳機能障害として後遺障害等級認定がなされる場合、自賠法施行令という政令には以下の通り分類基準が書いてあります。抽象的なので、パッと区別できないはずです。①介護を要する神経系統の機能または精神の障害
等 級 認定基準 1級1号 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの 2級1号 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、随時、介護を要するもの ②神経系統の機能または精神の障害
等 級 認定基準 3級3号 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの 5級2号 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 7級4号 神経系統の機能または精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの 9級10号 神経系統の機能または精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの - 判断基準~認定基準の説明~まだ抽象的でわかりにくい~
自賠法施行令上の認定基準は下記の通りに説明がなされています。ただ、まだ抽象的なため一般の人には具体的な判断は難しいと思います。もう一段階、具体的になっているのでもう少し我慢して読み進めていってください。等 級 概 要 1級1号 常時介護を要するもの(就労不能) 2級1号 随時介護を要するもの(就労不能) 3級3号 終身にわたり、およそ労務につくことができないもの:(介護は不要)自宅周辺を1人で外出できるなど、日常生活範囲は自宅に限定されていない。声かけや介助なしでも日常動作を行える。記録や注意力、新しいことを学習する能力、障害の自己認識、円滑な対人関係維持能力などに著しい障害があって、一般就労が全くできないか、困難なもの 5級2号 終身にわたり極めて軽易な労務のほか服することができないもの:単純なくり返し作業などに限定すれば、一般就労も可能。ただし新しい作業を学習できなかったり、環境が変わると作業を継続できなくなるなどの問題がある。このため一般人に比較して作業能力が著しく制限されており、就労の維持には職場の理解と援助を欠かすことができないもの 7級4号 労働能力が一般人平均以下に明らかに低下しているもの:一般就労を維持できるが、作業の手順が悪い、約束を忘れる、ミスが多いなどのことから一般人と同等の作業を行うことが出来ないもの 9級10号 就労可能な職種が相当な程度に制限されるもの:一般就労を維持できるが、問題解決能力などに障害が残り、作業効率や作業持続力などに問題があるもの - 具体的な認定基準
高次脳機能障害の等級認定は、具体的には、①意思疎通能力
②問題解決能力
③作業負荷に対する持続力・持久力
④社会行動能力の各能力を「(6段階評価で)どの程度喪失したか」「4能力のうちいくつ喪失したか」によって判断されています。
自賠責保険における高次脳機能障害認定システム検討委員会が、平成19年2月2日に「自賠責保険における高次脳機能障害認定システムの充実について(報告書)」という報告書で説明しているのです。 - 認定されうる等級の分類
4つの能力の喪失の程度(6段階評価)によって、認定されうる等級は下記の通りに分類されます。等 級 4つの能力の喪失の程度 1つ以上の能力の 2つ以上の能力の 1級1号 就労不能で常時介護を要するもの 2級1号 就労不能で随時介護を要するもの 3級3号 F全部喪失 E大部分喪失 5級2号 E大部分喪失 D半分程度喪失 7級4号 D半分程度喪失 C相当程度喪失 9級10号 C相当程度喪失 — 12級13号 B多少喪失 — 14級9号 Aわずかな喪失 - 補足(4つの能力について)
より具体的に検討していくと、4つの能力は下記の通りとなります。①意思疎通能力:コミュニケーション能力
=EX 相手の会話を聞き取り、意味を理解し適切に会話を成り立たせる力:
職場において他人とのコミュニケーションを適切に行えるかどうか等について判定する。主に記銘・記憶力、認知力又は言語力の側面から判断。②問題解決能力:未知の問題を解決する能力
=EX 「財布を落としてしまった時に、警察に届け出る」という判断をして問題を解決する力:
作業課題に対する指示や要求水準を正確に理解し適切な判断を行い、円滑に業務を遂行できるかどうかについて判定する。主に理解力、判断力又は集中力(注意の選択等)について判断を行う③作業負荷に対する持続力・持久力:作業を継続して耐える能力
:一般的な就労時間に対処できるだけの能力が備わっているかどうかについて判定する。精神面における意欲、気分又は注意の集中の持続力・持久力について判断を行う。その際、意欲又は気分の低下等による疲労感や倦怠感を含めて判断する。
- 等級認定に必要な書類
④社会行動能力:協調性等
:職場において他人と円滑な共同作業、社会的行動ができるかどうか等について判定する。主に協調性の有無や不適切な行動(突然大した理由もないのに怒る等の感情や欲求のコントロール低下による場違いな行動等)の頻度についての判断を行う。
- 補足(能力喪失の程度の6分類について
『喪失の程度の6分類』は下記の通りです。
A:多少の困難はあるが概ね自力で出来る(能力のわずかな喪失)
B:困難はあるが概ね自力で出来る(能力を多少程度喪失)
C:困難があり多少の援助が必要(能力を相当程度喪失)
D:困難はあるが援助があれば出来る(能力を半分程度喪失)
E:困難が著しく大きい(能力を大部分喪失)
F:できない(能力を全部喪失)
(3)どうすれば良いのか-認定のポイント
- 労災保険における高次脳機能障害整理表
上記表の4つの能力の喪失の程度の評価方法(6段階)については、一義的に明確とは言い難いのですが、自賠責保険―高次脳機能障害認定システム検討委員会の報告書によると、労災保険の認定基準に準拠していると解釈できます。従って、労災で用いられている下記高次脳機能障害整理表に、各4つの能力ごとに(表中の横軸)、能力喪失の程度をA~Fまでの6段階中どの段階と評価すべきか(表中の縦軸)あてはめて等級が認定されると考えられます。
被害者としては、
①認定を求める等級について証拠が揃っているか否か検証したり、
②事前に何級が付くか予想をたてたり、
③後遺障害等級認定異議申立の準備をするべきか否かを判断する一資料とできるのです。(高次脳機能障害整理表)
程度/能力 意思疎通能力 問題解決能力 持続力・持久力 社会行動能力 A
多少の困難はあるが概ね自力でできる
(わずかに喪失)
1つ喪失で14級(1)特に配慮してもらわなくても、職場で他の人と意思疎通をほぼ図ることができる。
(2)必要に応じ、こちらから電話をかけることができ、かかってきた電話の内容をほぼ正確に伝えることができる。(1)複雑でない手順であれば、理解して実行できる。
(2)抽象的でない作業であれば、1人で判断することができ、実行できる。概ね8時間支障なく働ける。 障害に起因する不適切な行動はほとんど認められない。 B
困難はあるが概ね自力でできる(多少喪失)
1つ喪失で12級(1)職場で他の人と意思疎通を図ることに困難を生じることがあり、ゆっくり話してもらう必要が時々ある。
(2)普段の会話はできるが、文法的な間違いをしたり、適切な言葉を使えないことがある。AとCの中間 AとCの中間 AとCの中間 C
困難はあるが多少の援助があればできる。
(相当程度喪失)
2つ以上喪失で7級、1つ喪失で9級(1)職場で他の人と意思疎通を図ることに困難を生じることがあり、意味を理解するためにはたまには繰り返してもらう必要がある。
(2)かかってきた電話の内容を伝えることはできるが、時々困難を生じる。(1)手順を理解することに困難を生じることがあり、たまには助言を要する。
(2)1人で判断することに困難を生じることがあり、たまには助言を必要とする。障害のために予定外の休憩あるいは注意を喚起するための監督がたまには必要であり、それなしには概ね8時間働けない。 障害起因する不適切な行動がたまには認められる。 D
(半分程度喪失)
2つ以上喪失で5級、1つ喪失で7級(1)職場で他の人と意思疎通を図ることに困難を生じることがあり、意味を理解するためには時々繰り返してもらう必要がある。
(2)かかってきた電話の内容を伝えることに困難を生じることが多い。
(3)単語を羅列することによって、自分の考え方を伝えることができる。CとEの中間 CとEの中間 CとEの中間 E
困難が著しく大きい
(大部分喪失)
2つ以上喪失で3級、1つ喪失で5級(1)実物を見せる、やってみせる、ジェスチャーで示す、などのいろいろな手段と共に話しかければ、短い文や単語くらいは理解できる。
(2)ごく限られた単語を使ったり、誤りの多い話し方をしながらも、何とか自分の欲求や望みだけは伝えられるが、聞き手が繰り返して尋ねたり、いろいろと推測する必要がある。(1)手順を理解することは著しく困難であり、頻繁な助言がなければ対処できない。
(2)1人で判断することは著しく困難であり、頻繁な指示がなければ対処できない。障害により予定外の休憩あるいは注意を喚起するための監督を頻繁に行っても半日程度しか動けない。 障害に起因する非常に不適切な行動が頻繁に認められる。 - どの様にあてはめるのか-だいたいの考え方
医学上の高次脳機能障害の程度についての評価にあたっては、評価手順や結果の解釈、評価点などが標準化された評価方法が用いられています。おおまかな理解としては、
①画像所見・意識喪失の程度、時間の長さより脳のどの領域・範囲に障害が残り、どの様な機能が失われたのか推測する
②日常生活状況報告書の記載内容などから問題行動を捉える
③各種神経心理学的検査結果により、障害の残った機能の詳細や重傷度を検出するというだいたいの考え方でよろしいかと思います。
(4)あてはめ~
- 12級や14級という認定で終わるパターン
既に述べた通り、証拠のうえでは、CT、MRI画像によって「脳室拡大」「脳内出血」「脳萎縮」などの画像所見が得られておらず、事故直後の意識障害も認められないのであれば、非器質性の精神障害等と扱われてしまって後遺障害12級、14級という認定で終わってしまいます。CT、MRI画像所見がない場合、自賠責に異議申し立てをしてもまず異議が認められることはなく、時間を無駄に浪費してしまうことになると思います。
CT,MRI画像所見がないけれども、自賠責で認定された等級以上の損害が発生しているとご主張される場合、本当に専門性が高く、この種の事案の厳しさを熟知している弁護士と相談のうえ、証拠を補充したうえで、訴訟の提起によって解決することを考えるべきです。
- 3級~9級の認定の分かれ目
高次脳機能障害として6段階で分類される4つの能力喪失の程度をどの様に評価するかによって3級~9級が分かれます。① 3級3号(1)4能力のうちいずれか1つ以上の能力の全部が失われているもの
(2)4能力のうちいずれか2つ以上の能力の大部分が失われているもの
(出来ること)
自宅周辺を一人で外出できるなど、日常の生活範囲は自宅に限定されていない。また声掛けや、介助なしでも日常の動作を行える。
(出来ないこと)
記憶や注意力、新しいことを学習する能力、障害の自己認識、円滑な対人関係維持能力などに著しい障害があって、一般就労が全くできないか、困難なもの。② 5級2号(1)4能力のうちいずれか1つ以上の能力の大部分が失われているもの
(2)4能力のうちいずれか2つ以上の能力の半分程度が失われているもの具体例:判断要素①~⑤などに治療経過、症状推移等を検討したうえ、(1)問題解決能力の大部分を喪失したか、(2)4能力いずれも半分程度を喪失したとして5級2号の認定をしたと思われた。ⅰ画像所見:MRI画像所見、脳室の軽度の拡大、脳萎縮有り
ⅱ頭部外傷後の意識障害についての所見:
初診時(急性期)の意識障害の程度:
JCS=3ケタ(刺激しても覚醒しない)
GCS=全く開眼なし、言語反応なし、意識回復に約3か月を要したⅲ神経心理学的検査結果(回復期・慢性期)
WAIS-Ⅲ=言語性IQと動作性IQとの差は15点以上の差、
F(Full)IQは出現頻度6.7%の数字
WAIS-R=記憶検査、言語性記憶、視覚性記憶、一般的記憶、遅延再生
いずれも平均に比して極めて低い
WCST結果=前頭葉機能検査結果、WAIS-Ⅲと合わせると計画性や思考の柔軟性
といった遂行機能が障害されていると推測。ⅳ神経系統の障害に関する医学的意見
運動機能障害有り、身の周り動作自立ⅴ日常生活状況報告書の記載
ADL(日常生活動作、食事、排泄、移動、入浴等の基本的な行動)は自立=つまり、身体的な介護は不要③ 7級4号(1)4能力のうちいずれか1つ以上の能力の半分程度が失われているもの
(2)4能力のうちいずれか2つ以上の能力の相当程度が失われているものⅰ画像所見:脳挫傷とは書かれていたが、画像上イマイチはっきりしないようにみえた。
ⅱ頭部外傷後の意識障害についての所見:
初診時(急性期)の意識障害の程度
JCS=3ケタ(刺激しても覚醒しない)
GCS=全く開眼なし、言語反応なし、意識回復まで6時間を要した
※意識障害の時間がポイントとなる6時間を超えていたのも高次脳機能障害の発症を認める要素となったと思われる。
※意識障害は深かったが、意識清明になるまでの時間は比較的早かった。ⅲ神経心理学的検査結果(回復期・慢性期)
WAIS-Ⅲ=F(Full)IQはかなり低かったが信用性に疑問符。
あまり神経心理学的検査は実施されていなかった様子。ⅳ神経系統の障害に関する医学的意見
運動機能障害有り、身の周り動作自立ⅴ日常生活状況報告書の記載
日常生活に必要な動作の多くが困難
※ 地方都市で、高次脳機能障害支援の拠点病院ではなく、検査結果についての資料は不十分であったが、画像所見があったこと、意識障害の程度が重く、意識喪失の時間が6時間を超えていたこと等が証拠から認定できたため7級が認定されたと思われました。④ 9級10号4能力のいずれか1つ異常の能力の相当程度が失われていて、困難はあるが多少の援助があれば、意思疎通、問題解決、持続力・持久力、社会行動能力が保管できる程度。就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの。
具体例:
ⅰ画像所見 有り
ⅱ数年間引きこもり生活
2、介護を要する神経系統又は精神の障害の程度~1級1号、2級1号~
身体機能は残存しているが、高度の痴呆があるために、生活維持に必要な身の周り動作に全面的介護を要するもの
労災の基準を参考にすると、
(1):食事・入浴・用便・更衣等に常時介護を要するもの
(2):高度の痴呆や情意の荒廃があるため、常時監視を要するもの
著しい判断力の低下や情動の不安定などがあって、1人で外出することができず、日常の生活範囲は自宅内に限定されている。
身体的動作には排泄、食事などの活動を行うことができても、生命維持に必要な身辺動作に、家族からの声掛けや看視を欠かすことができないもの
労災の基準を参考にすると、
(1):食事・入浴・用便・更衣等に随時介護を要するもの
(2):痴ほう、情意の障害、幻覚、妄想があるため、随時監視を要するもの
(3):自宅内の日常生活動作は一応できるが、1人で外出することなどが困難であり、外出の際には他人の介護を必要とするため、随時他人の介護を必要とするもの
(5)注意点:高次脳機能障害の発症の判断基準は、場面によって異なる基準が用いられていること
ア 行政(厚生労働省)で用いられている診断基準
厚生労働省では、平成13年度より、高次脳機能障害者への連続したケアを実現するために、地方自治体と国立身体障害者リハビリテーションセンターが共同でケアに取り組む高次脳機能障害モデル事業を開始しています。
各地域にある拠点施設において、高次脳機能障害に関連する機能回復訓練や医療機関、障害者施設と一体となって社会復帰支援や生活支援等が実施されています。
この様な行政的な医療や福祉サービスを利用するにあたって用いられている下記診断基準は、労災や自賠責保険の基準とは異なる基準となっています。
交通事故の集客を意図した弁護士HPで高次脳機能障害の診断基準として下記基準が紹介されているのを見かけた事があるのですが、福祉を目的とした下記基準(どちらかというと認定基準としては緩やか、甘め)と損害賠償の可否判断につながりうる自賠責の判断基準(辛め、厳しめ)や裁判所の判断(個別具体的に検討して妥当な解決を指向するが、賠償を命じることが出来るだけの立証は要求される)の枠組みとは必ずしも一致しているわけではありません。
行政の診断基準で高次脳機能障害と認定されたとしても、自賠責、訴訟でも高次脳機能障害の発症を認定してもらえるとは限らないのです。
Ⅰ.主要症状等 |
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1.脳の器質的病変の原因となる事故による受傷や疾病の発症の事実が確認されている 2.現在、日常生活または社会生活に制約があり、その主たる原因が記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害である。 |
Ⅱ.検査所見 |
MRI、CT、脳波などにより認知障害の原因と考えられる脳の器質的病変の存在が確認されているか、あるいは診断書により脳の器質的病変が存在したと確認できる。 |
Ⅲ.除外項目 |
1.脳の器質的病変に基づく認知障害のうち、身体障害として認定可能である症状を有するが上記主要症状 (Ⅰ-2)を欠く者は除外する。 2.診断にあたり、受傷または発症以前から有する症状と検査所見は除外する。 3.先天性疾患、周産期における脳損傷、発達障害、進行性疾患を原因とする者は除外する。 |
Ⅳ.診断 |
1.Ⅰ~Ⅲをすべて満たした場合に高次脳機能障害を診断する。 2.高次脳機能障害の診断は脳の器質的病変の原因となった外傷や疾病の急性期症状を脱した後において行う。 3.神経心理学的検査の所見を参考にすることができる。なお、診断基準のⅠとⅢを満たす一方で、Ⅱの検査所見で脳の器質的病変の存在を明らかにできない症例については、慎重な評価により高次脳機能障害者として診断されることがあり得る。また、この診断基準については、今後の医学・医療の発展を踏まえ、適時、見直しを行うことが適当である。 |
高次脳機能障害者支援の拠点病院、リハビリ施設等に通所されている方の場合、作業療法士、言語聴覚士による検査が実施され、評価報告書が作成されていることがあると思われます。
高次脳機能障害者支援の拠点施設で作成された資料は、後遺障害等級認定異議申立や訴訟による解決に際して「使える」と思います。
イ ちなみに、行政(労災補償)で用いられている判断基準
器質的な脳損傷に起因する高次脳機能障害であることが必須条件とされています。労災補償という性質上、頭部外傷による器質的な脳損傷に限定されず、脳血管障害による器質的な脳損傷も含まれるとされます。労災補償における高次脳機能障害発症の有無についての判断基準は、以下の通りです。
Ⅰ.主要症状等 |
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1、業務上の負傷や疾病による発症の事実が確認できる。 2、現在日常生活、又は社会生活に支障があり、その主たる原因が高次脳機能障害である。高次脳機能障害については、意思疎通能力、問題解決能力、作業負荷に対する持続力、持久力及び社会行動能力の4つの能力低下に着目する。 |
Ⅱ.検査所見 |
MRI、CT、脳波などにより、高次脳機能障害の原因が脳の器質的病変に基づくと診断される。 |