刑事裁判手続き
1、交通事故の加害者に成立する犯罪名
交通事故の加害者(人身事故)の刑事責任は、昨今、「まだまだ軽すぎるのではないか?」「もう少し厳罰化した方が良いのではないか?」と世論が盛り上がり、平成26年5月から、通称「自動車運転処罰法」という法律が施行されています。
この法律の成立により、交通事故の加害者に成立する犯罪名としては、主に以下の3通りということになりました。
(1)過失運転致死傷罪(5条):
→7年以下の懲役もしくは禁固か、または100万円以下の罰金
(2)危険運転致死傷罪(2条~):
過失による事故ではなく、正常な運転が困難なほどの飲酒運転、薬物使用運転、高速運転、技能不足状態での運転、信号無視などによる事故
→(致傷)1月以上~15年以下の懲役
→(致死)1年以上~20年以下の懲役
(3)業務上過失致死傷罪、重過失致死傷罪(刑法211条)
自動車以外の交通事故(自転車等の事故)
→1月以上~5年以下の懲役もしくは禁固、または100万円以下の罰金
2、被害者参加制度
(1)制度導入の背景
かつては、犯罪の被害者による加害者(被告人)を厳罰に処して欲しいという意見は、刑事裁判の手続きで直接裁判所に伝える機会もなく公判が終わっていました。
一番の被害に遭った被害者としては、刑事裁判の場で、加害者(被告人)に対し、真相を直接聞きたい、被害に遭った心情や被害の実情を伝えたい、裁判官に対し処罰意見を述べたいという機会を保障しなければ、いったい誰の為の裁判なのだ?という話になってしまいます。
これじゃおかしい、ということで、2008年12月から被害者参加制度が導入され、犯罪の被害者、遺族、親権者法定代理人や依頼を受けた代理人弁護士が刑事裁判へ参加することが認められたのです。
(2)被害者参加制度で何が出来るのか
被害者参加制度の対象となる事件(殺人罪、傷害罪、傷害致死罪、自動車運転過失致死傷罪、危険運転致死傷罪、業務上過失致死傷罪などの犯罪が加害者に成立する場合)で、検察官から起訴がなされ、刑事裁判が開かれることを知らされると思います。
被害者側は、裁判に参加することは義務ではないのですが、参加申し出をすることが出来ます。
裁判所から刑事裁判への参加を許可された場合、被害者参加人は、
①刑事裁判の法廷へ出席し、
②被告人に対する質問、
③事故前後の被害者の生活や人生設計の変貌ぶり、心情の陳述、
④被告人の刑事処分についての意見陳述
などが出来ます。
弁護士は、この被害者参加からサポートすることが出来るのです。